ぼくが全館暖房というものの威力を実感したのは、終戦直後、小学校三年生ぐらいの時、当時、父が雑貨の輸出入をやっていた関係で知りあった米軍将校の家へ招かれた時である。家といっても、それは基地の中のいわゆるカマボコハウスの一つだったのだが、一歩中へ入ると、床に仕こまれたグリルから熱風が吹きだしていて、ムッとするほど暖かい。その中で彼らが真冬であるにもかかわらずシャツ一枚でのびのびと動きまわっているのを見て、子ども心にもなんと豪勢な暮らしであろうと思って嘆息をもらしたのであった。
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なにしろ、その頃は物資不足、燃料不足であったうえに、日本人の住宅では、掘炬燵と火鉢だけが暖房装置であるという時代だから、全館暖房の印象もそれだけ強烈であったのだ。