欧米人は浴槽の中で身体を洗うから、その湯は一回限りで捨ててしまう。つまり、ある人が身体を浸しているお湯はその人だけのもので、決して他者と共有されない。ところが日本ではたとえ同じ時に一緒に入浴しなくても、後から入浴する人も同じ湯に身を浸す。言い替えれば、浴室や浴槽が皆のものであると同様に、いったん浴槽に満たされた湯も少しずつ入れ替わるとは言え、皆のものである。日本の家庭で「いい湯だ」という表現が家族に向けられる場合には、自分が身体を浸した湯の「いい」状態を相手と共有したいという気持も含まれている。
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つまり、日本人の入浴は、同時に風呂に入らなくとも「同じいい湯」を通して気分が通いあうのであり、その気分が保たれる限り、風呂は日本の住まいの中で、欧米人の考えの及ばぬような重要な役割を演じつづけるだろう。